RESIDENCE 双行燈


京都大学正門前から少し歩いたところにある木造賃貸アパート兼オーナー住居である。元々、ほとんど朽ち果てていた木造2階建ての連棟町家がシンメトリーで建っており、その老朽化に伴い、持ち主である姉妹が建て替える事になった。元の建物がシンメトリーだったことから、当初から建物形状をツインにするつもりだった。それは、なんとなく元の建物の形状を思い起こさせることが、記憶の継承に繋がるのではないかと考えたからである。この辺りは、近くに吉田神社があり、その背景には吉田山がそびえる景観規制区域でもある。軒やケラバの出、屋根形状、色合い等、様々な規制がある中で、どうすれば、記憶だけを継承しつつ、新しいものに置き換えれるのかを模索した。京都の歴史は古いものを残すことだけで残った街ではない。その時代に合わせて、新しいものも取り入れる柔軟性こそが、古い歴史を紡いできたのではないか。

構造:有限会社天野一級建築構造設計事務所
写真:中村写真工房 中村大輔